こんばんは、いしかわです。
大仙市の秋田清酒といえば、刈穂と出羽鶴の2枚看板。
その1枚である『出羽鶴』から、特殊な搾り方をした1本が登場しました。
その名も、
“出羽鶴 袋吊り雫 純米吟醸”
さっそくどんなお酒なのか見ていきましょう。
『袋吊り』ってなんぞ?
『袋吊り』とは、もろみの搾り方のことで、品評会用のお酒によく使われる搾り方です。
説明によく使われる言葉。
あなたも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
『圧力をかけない』
この、『圧力をかけない』ってどういうことなんでしょうか。
実はいまの日本酒の大半って、『アコーディオン』で搾っているんです。
正確には、アコーディオンのような機械。
穴の開いた板同士でプレスすることで、酒だけが穴をとおり、酒粕が板に貼りつく仕組みになっています。
これがいわゆる『圧力をかけた搾り方』です。
ほかにも、もろみを入れた目の粗い袋をかさねることで、袋の重さで搾る方法もあります。
板でのプレスが横のチカラだとすると、こちらは縦のチカラ。
どちらも『圧力をかける搾り方』となります。
では、『圧力をかけない』とは……
答えはそのまま、言葉のなかにあります。
『袋吊り』
『袋』を『吊るす』
酒母用のちいさなタンクにまたがる様に木の棒を置き、そこにもろみを入れた袋を吊るします。
かかる圧力は、重力のみ。
余分なチカラを一切かけず、もろみにストレスを与えない搾り方です。
「袋吊り最高じゃん!」
と思われたかもしれません。
ですが、いい話には落とし穴がつきもの。
ぜんぜん搾れません。
ゆーーーーーーっくり。
本来ならば搾るまでの段取りが大変なだけで、はじまってしまえば機械まかせの『搾り』です。
それが『袋吊り』ともなれば、とにかく人手。
そして時間が奪われます。
だからこそ特別。
『袋吊り』は特別な1本のための搾り方とされています。
さて、そんな贅沢な搾り方をした『出羽鶴 袋吊り雫 純米吟醸』は、いったいどんな味わいだったのか。
感想に移りましょう。
『出羽鶴 袋吊り雫 純米吟醸』の味はどうだった?
この1本、一言であらわすのならこうなります。
“甘みと苦みがジューシー!”
日本酒度でみれば+3とやや辛口ですが、強く感じたのは甘みと苦みでした。
若い日本酒特有の苦みが、甘みといっしょに舌に広がります。
正直いって、これだけならば得意ではない味わいです。
ところがどっこい。
ここが袋吊りの妙なんです。
口当たりのスムーズさで飲ませます。飲ませるんです。
そして後から気づきます。
このお酒のうまみの深さに。
「袋吊り雫って、めちゃめちゃジューシーだったんだな」と。
ほかのお酒を飲んだときに振り返ってしまうほど、この1本のジューシーさは心に残りました。
となると、スポットライトを当てるべきはやっぱりここになります。
“強いうまみをスムーズに飲ませるチカラ”
袋吊りって、すごいです。
『出羽鶴 袋吊り雫 純米吟醸』の商品情報
- 原料米:山田錦
- 精米歩合:50%
- アルコール分:16度
- 日本酒度:+3
- 酸度:1.8
- 発売時期:2月下旬頃
まとめ:品評会用の搾り方が身近に楽しめる1本
すべてのものに言えることなのですが、手間とコストをかけたものが必ずしもおいしいとは限りません。
10時間煮込んだ豚骨スープの匂いに好き嫌いがあるように。
ジャコウネコの糞から生まれた最高級コーヒー豆の価値がわからないように。
嗜好品である以上、好みはぜったいに分かれるものです。
それでも、これだけは言わせてください。
手間とコストをかけたものからは、手間とコストをかけた味がします。
こうやって作った。だからこうなった。
方法が必ず味わいに現れるんです。
『特別』を味わうのなら、『特別』な日本酒を。
『出羽鶴 袋吊り雫 純米吟醸』は、その『特別』を身近なものにしてくれました。
季節がきたらぜひ一度、ご賞味くださいませ。
それでは今回はこのへんで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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