「日本酒の甘みが好きなんだけど、ちょうどいいお酒に出会えない」
「いっそ甘口でおいしい日本酒をまとめて欲しいんだけど」
この記事は、そんなあなたに向けて書いています。
こんにちは。
さるあみ改め、いしかわです。
いつからでしょうか。
日本酒=辛口。
辛口がうまいという風潮が生まれたのは。
たしかに昔は、日本酒の甘みはクドくて重かったかもしれません。
実際、15年ほど前に飲んだ『ある1本』は、雑な甘みが重くて苦痛でした。
その1本のせいで「私に日本酒は無理」と思わされたほどです。
が、しかし。
しかしです。
もう時代は変わりました。
日本酒の甘みは『すっきり』と、そして、『軽く』なったんです。
だからこそ。そんな令和の今だからこそ、おすすめしたい日本酒があります。
「この甘さはうまい!」
と、おもわず口元がゆるむ秋田の地酒を、あなたに向けて7本+2本紹介していきます。
いずれのお酒も、300以上の銘柄を実際に飲んだ上でセレクトしたものです。
ぜひ、日本酒選びに迷ったときの参考にしてくださいね。
それでは、いってみましょう。
甘口の日本酒を選ぶときのポイント
日本酒には甘辛度をあらわす数値、『日本酒度』という項目があります。
この『日本酒度』がプラスであるほど辛口に。
逆に、マイナスであるほど甘口となります。
※例えば
- -25(頭おかしい甘口)
- -6~(大甘口)
- -3~(甘口)
- ±0(中口)
- +3(辛口)
- +6(大辛口)
- +25(頭おかしい辛口)
だいたい、このくらいの感覚で分別されると思ってください。
とはいえ、もちろん日本酒の味わいは『日本酒度』だけでは決まりません。
数値以上の味わいを叩き出すことも多々あります。
それでも『日本酒度』に注目してほしい理由。
それは、“高確率でラベルに書いてあるから”です。
なので、ラベルから得られる情報として注目してみてくださいね。
300銘柄から選ぶ、甘みがおいしい秋田の地酒7選
それでは早速、7本の地酒をご紹介します。
- 写真
- 商品の説明
- 日本酒度
という順番でいきます。
つたない手書きPOPとあわせて楽しんでいただけるとうれしいです。
純米吟醸酒 松声(鈴木酒造店)
酒造の名前になじみはなくとも、こう言われれば聞いたことがあるのではないでしょうか?
“秀よし”
角館と大曲のあいだに位置し、武家屋敷の桜がよく似合うブランドです。
『秀よし』における『純米吟醸酒 松声(しょうせい)』のポジションは、The・定番酒。
日本酒度は+3と、数値だけでみればやや辛口ですが、ここで語りたいのは『ふんわりとした甘み』です。
やわらか~~な甘みが、すーーーっと消えていく。
その儚く伸びる時間がとても心地いいんです。
ちなみに私のインスタでは、こんなコメントをいただきました。
「秋田を旅行した際、地元のおじさんに薦められて飲んだけど、おじさんに感謝するほどおいしかった思い出の酒です」
思い出になるお酒って、素敵ですよね。
きっと薦めたおじさんも嬉しかったと思います。
『松声(しょうせい)』には名前に負けない風情と、記憶に残る味わいがあります。
高清水 デザート純吟(秋田酒類製造)
日本酒業界にまったく新しいカテゴリーをひっさげて登場したのが、高清水のデザート純吟です。
デザートワインのような味わいを、『米』と『米こうじ』だけで作り上げたことで、発売当時から大きな話題を呼びました。
その日本酒度は、なんと-32。
正直、早すぎた。
発売当時はあまりにも斬新すぎたように思います。
まだ今ほど女性ユーザーがいないなかで、女性だけをターゲットにした新ジャンル。
フルートグラスで飲んでいるCMも、男性からの購入を遠ざけていました。
ですが、いまは違います。
令和です。
時代が追いつきました。
デザートワインのように楽しむもよし。
洋食にあわせるもよし。
スイーツとのペアリングを楽しむもよし。
『日本酒はこう!』という固いものを吹き飛ばして、あなただけの楽しみ方をしちゃいましょう。
いつもの週末がなんだか楽しくなっちゃいますよ。
天の戸 純米大吟醸45(浅舞酒造)
天の戸をつくる浅舞酒造は、地元の原材料のみで仕込むことでも有名な酒造です。
いうなれば、風土の酒。
なかでも『天の戸 純米大吟醸45』は、コストパフォーマンスにすぐれた1本です。
日本酒度は±0と中口にあたります。
ですが、口に含んだときの甘さはしっかりジューシー。
裏にはカァーッとのぼる辛さもあります。
青りんごのような香りは、甘酸っぱくて華やか。
お猪口よりもグラスがよく似合います。
精米歩合45%の純米大吟醸にして720mlが1,650円前後というのは、なかなかお目にかかれるものではありません。
この味、この贅沢。
まずは1本、試してみてはいかがでしょうか?
金紋秋田X3 三倍麹仕込み純米酒(金紋秋田)
麹を通常の3倍量つかうことで、甘酒のような効果を期待したのがこの『金紋秋田X3』。
その味わいには、甘みにどっしりとしたコクがあります。
正直いって、そのまま飲めばコクの強さに1歩退いてしまうかもしれません。
ですが、飲み方。
飲み方を変えることで、『X3』が歩み寄ります。
どちらも日本酒の飲み方としてはなじみがないですよね。
でも、これがうまい。
これがおいしいんですよ。
日本酒らしさを失わずに、甘みを心地よく、そして飲みやすくしてくれます。
日本酒=ストレート
そんな印象を吹き飛ばしてくれる、価値観の変わる1本です。
だまされたと思ってぜひ一度、試してみてくださいね。
両関 純米吟醸 翠玉(両関酒造)
両関酒造といえば、いちばんに挙げるのはやっぱり『花邑』ですよね。
ですが実は、『花邑』が生まれたのとおなじ時期に、試行錯誤をかさねて生まれたブランドがあります。
それが『翠玉』。
純米吟醸の日本酒度は-6です。
手書きPOPに書いたことそのままなのですが、甘みがとにかくジューシー!
それでいて、軽いんです。
いや。
もしかしたら、重いけどそれを感じさせないだけなのかもしれません。
それほどに甘みがなめらかで、飲みやすいんです。
誰が飲んでも「こういうお酒としてうまい」と、納得させるチカラのある1本ですよ。
花邑 純米酒 陸羽田(両関酒造)
逆張りしていくスタイルの私でも、やはりこの1本は外せません。
“花邑”
言わずと知れた両関酒造の主力ブランドですが、なかでもこの『陸羽田』をおすすめさせてください。
なにせこの1本、
“甘みが透明でジューシー”
やわらかくも盛大に広がります。
甘いだけのお酒って飲んでいるうちに疲れてきがちですが、『陸羽田』は軽いっ。
重めの甘みなのに、軽いんです。
「ちょっと行き過ぎかな?」と思える甘みを、スムーズに飲ませてくれます。
日の丸醸造の『うまからまんさく』に倣えば、『うまから』ならぬ『うまあま』。
知名度の高さそのままに、20代前半の方や女性の方に飲んでいただきたい1本です。
飛良泉 純米大吟醸 楪蔵(飛良泉本舗)
正直に言います。
この『楪蔵(ゆずりはぐら)』、かなりお高いです。
720mlのみの販売で、3,960円。
専用のカートン付きとはいえ、普段づかいで買うにはあまりにも高すぎる1本です。
それなのに、なぜこの並びにいるのか。
それは、
圧倒的においしいからです。
ひとくちの充実感が凄まじいんです。
苦み渋みがないので、上質な甘みがとにかくスムーズに流れます。
さらに驚くべきは、『酒の落ちつき』です。
ジューシーさはありますが、重みがありません。
ほどけるように広がる甘みは、圧巻の一言。
ちょっとこれは美味しすぎます。
甘口の理想形と言ってもいいかもしれません。
しかも、写真にはありませんが、カートンのクオリティも見事なものなんです。
なんでもいいです。日本酒のカートンを思い浮かべてみてください。
その箱、たぶん四角くいですよね?
実はこの『楪蔵(ゆずりはぐら)』のカートン……筒状です。
卒業証書みたいな形をしています。
なので、かなりオシャレ。
贈り物にしたら間違いなく喜ばれるデザインです。
自分で飲むもよし。
大切な人に贈るもよし。
いま買わずとも、覚えておいてまったく損のない1本ですよ。
番外:桜名月(福禄寿酒造)、龍湖(秋田清酒)
ここまで7本を紹介してきましたが、ここからはちょっと例外の2本を紹介させてください。
桜名月、龍湖。
この2本がなぜ例外なのか。
その理由は、販売の時期が限られているからです。
『桜名月』は、福禄寿酒造より3月末に発売される春酒。
『龍湖』は、4月頭に生酒。5月に火入れを発売する季節限定酒です。
どちらも酒米は『秋田酒こまち』が使われています。
さらにこの2本、背景が特殊なんです。
桜名月はラジオの企画から生まれた1本で、醸造には秋田のローカルタレントさんが関わっています。
「関わっている」なんて書くと、お手伝いのレベルを想像するかもしれません。
実は、そんなレベルではないんです。
田植えに入り、稲刈りも行い、醸造にも携わり、販促も行う。
言うなれば、あれです。
TOKIOです。
鉄腕ダッシュでやるようなことを、ローカルタレントの桜庭みさおさん、真坂はづきさん、椎名恵さんの3名で行っています。
そうして生まれた1本は、甘みが上品。
消えていくまでの余韻が見事で、心地よく後を引きます。
桜名月は私と友人の2人で飲んだのですが、友人はふだんお酒を飲みません。
飲んでもビール、チューハイを1杯。
それで顔が真っ赤になって、飲むをやめるタイプです。
そんな友人が「うまい」と唸り、3杯も4杯も飲んだのが『桜名月』です。
私のどんな感想よりも、友人の飲んだ量こそがうまさの証明。
見かけたらついに巡ってきたのだと思って、ぜひ手に取っていただきたい1本です。
そして、『龍湖』。
『龍湖』は、酒造ではなく、酒米の生産者である『味楽農場』さんが思い描いた1本です。
味わいは、やはり品の良い甘さ。
秋田酒こまちの特徴がグイグイと出てきます。
ただ、それだけならどこにでもある1本です。
『龍湖』のスゴイところは、“上品な甘みに力強さがある”ことです。
芯があると言ってもいいかもしれません。
記憶に残るうまみとして、秋田酒こまちの良いところを引き出しているんです。
ひとたび飲めば、
「うまい酒こまを飲んだ」
そんな記憶があなたにもきっと残るはずですよ。
とはいえ、やはり例外。
『龍湖』は買える場所がごくごく限られています。
秋田市に限って言えば、買えるのは『酒のこん』さんのみです。
秋田市旭南のサイクルベースあさひ、まるまつの斜め向かいにありますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。
まとめ:甘口も辛口も中口も、あなたの好みを楽しもう
ここまで日本酒の甘みに目を向けながら、7本+例外。9本の日本酒を紹介してきました。
なかなかの日本酒度のものもあれば、日本酒の明記されていないものもありましたよね。
ここから先は、好みの世界です。
辛口のお酒にも甘みはあります。
いま飲んでいるお酒が辛いと感じたなら、より日本酒度がマイナスなものを。
甘すぎると感じたら、ちょっとプラスなものを。
少しずつ少しずつ、自分にあった味わいに近づけていってください。
そうするとやがて辿りつきます。
「これ! この味!」というお酒に。
そして、そこからさらに気づきます。
「これだ!」というお酒に出会えたのに、なぜか他のお酒を飲んでいる自分に。
ここから先は沼です。
新しく出る日本酒を追いかけていると、同じお酒を飲んでいる暇などありません。
『気になる』を追いかけて、どんどん深みにハマっていきましょう。
ではでは、今回はこのへんで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。