「甘いとか辛いじゃなくて、飲みやすい秋田の日本酒が知りたい」
「いま買いに行ける秋田の日本酒が知りたい」
この記事は、そんなあなたに向けて書いています。
はじめまして。
スーパーで酒担当者をしてきた経験を活かし、秋田の地酒を発信しているいしかわと申します。
スーパーではさまざまな秋田の酒に触れ、それはそのまま飲む機会へとつながっていきました。
もうお店は辞めたのですが、今でも日本酒を飲むことだけは辞めていません。
なので、飲んだ本数は350を数えます。
今回はそのなかから、『飲みやすかったもの』を中心に16本紹介します。
なかなか買えないものを除き、通年販売と限定商品に分けてまとめました。
好みの偏りも減らしたつもりです。
ただただ「あれ、おいしかったなあ」と涎の出るものを選んでいます。
今回紹介する1本から、それをつくった酒造にまで興味をもっていただけるとすごくうれしいです。
ぜひ、最後まで読んであなたの日本酒選びの参考にしてみてくださいね。
どうやって選んだの?
改めて、筆者がこれまでに飲んできた秋田の地酒は、インスタグラムの投稿で282。
プラス、手書きPOPを100枚書くという企画で100本飲んでいます。
そのまま382本とはいきませんが、約350本は飲んでいるはずです。
そのなかから、単純においしかったものをピックアップ。
ピックアップしたもののなかから、
通年商品を7本。
季節限定、期間限定、PB(プライベートブランド)から9本。
計16本に絞りました。
350本から選ぶ、飲みやすい秋田の日本酒7選(通年商品)
通年商品ということ、蔵にとっての定番の味。
どれも蔵の地力が見える1本です。
「毎日飲むならこういうのでいいんだよ」
と唸るものをそろえたので、その1本が家にある景色を想像しながら読み進めてくださいね。
特別純米酒 うまからまんさく(日の丸醸造)
日の丸醸造は横手市にあり、「まんさくの花」が有名な酒造です。
うまからまんさくの特徴は、なんといっても『うまからさ』にあります。
日本酒度は+8と、立派な大辛口。
それでいてたっぷりの『うまみ』が感じられます。
さらにもうひとつ。
この情報こそが、『うまからまんさく』を語る上で欠かせないものとなります。
実は『うまからまんさく』は、日の丸醸造の蔵人がもっとも愛飲している1本。
ふだんの晩酌でもっとも飲まれているお酒なんです。
私も飲んでみて思いました。
「このお酒が常に家にあったら幸せだろうな」と。
山本 ピュアブラック(山本酒造店)
『山本 ピュアブラック』をつくる山本酒造店は、八峰町にある“秋田でも指折りのおもしろ酒造”です。
まず、発想が奇抜なんです。
- 五種の酒米をブレンドした『ロイヤルストレートフラッシュ』
- 野球を意識した『ツーアウトフルベース』
- 春の『うきうき山本』
- 夏の『ドキドキ山本』
などなど、とにかく話題に事を欠きません。
そんな山本酒造店のなかでも、『ピュアブラック』は超正統派。
グレープフルーツのような酸と苦みをもってスパッと切れる1本です。
NEXT5をつづった『美酒復権』という本には『山本酒造店のこれまで』が描かれているのですが、それは本当に険しい道のりでした。
すごい蔵なんです、山本って。
ここまでの道のりを考えると、とても素通りなどできません。
奇抜を手にとる前に、まずは正統派から。
攻めてみてはいかがでしょうか?
ゆきの美人 純米 完全発酵(秋田醸造)
『ゆきの美人』をつくる秋田醸造は、秋田市にあるちいさな酒造です。
マンションの1Fが酒蔵という特殊な佇まいは、訪問者が一度は素通りしてしまうほど異質。
「え、ほんとにここ?」
と思ってしまうほど、あなたが想像する蔵のイメージとはかけ離れています。
さて、そんな『ゆきの美人』なのですが、実は純米酒が2種類あるんです。
『純米酒』と『完全発酵』。
『純米酒』は、辛さを抑えた若々しい1本。
対して『完全発酵』は、辛さを引き出した芯のとおった1本。
どちらもちがってどちらも良いのですが、今回推したいのは『完全発酵』のほうです。
日本酒度はおどろきの、+12~15。
超辛口でありながらもコクのあるフルーティーさを持ち、ガス感と辛さで鮮やかに飲ませます。
『ゆきの美人』を知るのなら、まずはここから。
ぜひどうぞ。
やまとしずく 山廃純米酒(秋田清酒)
『やまとしずく』をつくる秋田清酒は、大仙市にある酒造です。
主な銘柄には『刈穂』『出羽鶴』があり、目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
『やまとしずく』はというと、ちょっと特殊。
契約販売店のみの販売となります。
なので、スーパーや大手酒販店には並びません。
とはいえ、契約販売といっても取り扱い店は豊富です。
県内の地酒屋さんはもちろん、最近では通販で取り扱うお店も増えてきています。
さて、そんな『やまとしずく』の『山廃純米酒』なのですが、味わいは深くてジューシー。
ラベル上では辛口ですが、広がる甘みが心地良い1本となっています。
『山廃好き』の方は『純米酒』よりもこちらがおすすめですよ。
一白水成 純米吟醸(福禄寿酒造)
『一白水成(いっぱくすいせい)』をつくる福禄寿酒造は、五城目町にある酒造です。
主なブランドは県外向けの『一白水成』と、県内向けな『十五代彦兵衛』の2枚。
なかでも『一白水成』は、全国的にも高い評価を得ているブランドです。
そんな『一白水成』の『純米吟醸』ですが実は、2021年に入るまで720mlという規格がありませんでした。
いままでは一升瓶のみの販売だったんです。
なのでこの1本は、定番商品にして新商品。
「このサイズを待っていた!」
という方も多いのではないでしょうか。
肝心な味わいはというと、まさにお手本。
香るべきところで香り、広がるべきところで広がり、伸びるべきところで伸び、消えるべきところで消える。
「うまい純米吟醸ってこうだよな~」と思わせる、うまみ豊かな1本です。
ただ、残念ながら特約店のみの販売となります。
申し訳ないのですが、お近くの地酒屋さんをご利用ください。
福小町 特別純米酒(木村酒造)
『福小町』をつくる木村酒造は、湯沢市にある酒造です。
湯沢駅からほど近いところにあり、観光がてら徒歩で行けるのも魅力のひとつとなっています。
主力商品は、『福小町』と『角右衛門』の2枚。
『角右衛門』は特約店のみの販売で、『福小町』は全国展開のブランドとなります。
ちなみに木村酒造ですが、
- 賞レース常連の『大吟醸』
- KuraMasterでプラチナ賞を獲得した『純米吟醸』
- 燗酒コンテスト常連の『芳香辛口』
というように、とにかく実績に富んでいます。
それなのに、なぜ『特別純米酒』なのか。
その理由はひとつしかありません。
ただ単においしいからです。
はじめて居酒屋で飲んだときは、日本酒が得意ではない友人と驚きを共有しました。
あれから何年経てど忘れることはありません。
友人に「これ、おいしいですね」と言わせてくれたこと。
何よりもうれしくて、感謝しかない1本です。
さて、そんな『福小町 特別純米酒』なのですが、実は秋田県内限定流通。
……だったはずなのですが、楽天で見つけてしまいました。
ショップ名は『秋田県物産振興会』。
こちらは確か、アトリオン地下にあるおみやげ屋さんだったかと思います。
「どこにいても買えてしまうのか……」
と、少し悲しい気持ちになりましたが、最終的に勝ったのはやっぱりうれしさです。
県内だけでなく、県外にも知られてほしい『福小町 特別純米酒』。
いつの間にか使用米が『ぎんさん』になり味わいに濃さが生まれましたが、まだまだあの日を思い出すうまさです。
ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。
春霞 純米酒 赤ラベル(栗林酒造店)
通年商品7選のトリを飾るのは、栗林酒造店の『春霞』です。
蔵の酒の6割以上に『美郷錦』をつかっており、その扱いは県内でもピカイチ。
蔵の敷地内にわく地下水でつくられた酒はやわらかく、『春霞』というネーミングにぴったりの酒質をもっています。
さて、そんな『春霞』なのですが、『赤』があるなら他の色もあります。
- 緑
- 白
- ピンク
- 花
- 田んぼ
- 湧き水
とにもかくにも、たくさんあるんです。
なのになぜ『赤ラベル』なのか。
その理由はひとつしかありません。
おいしいからです。
『ピンク』は秋田県内限定販売。
『白』『花』『田んぼ』『湧き水』は、季節限定なので外したという事情もあります。
ですが通年。
通年販売の純米吟醸『緑』とくらべると、個人的には『赤』が勝ります。
「美郷錦の華やかさを静かに、激しすぎずに堪能できて、飲み飽きしない」
そんな日々の晩酌に似合う1本。
それが『赤ラベル』です。
350銘柄から選ぶ、飲みやすい秋田の日本酒9選(季節限定、数量限定、PB)
ここからは『限定品』のなかから9本紹介していきます。
春夏秋冬すべての季節から選んでいるので、あなたが読んでくれている今にあうお酒がきっと見つかるはず。
ここまでも長期戦でしたが、ここからも長期戦となります。
ブックマークして日を改めるも良し。
いま読みきってしまうも良し。
疲れたら休憩して、あなたのペースで読み進めていってくださいね。
ではでは後半戦、いってみましょう。
純米吟醸 桜名月(福禄寿酒造)【春】
『一白水成 純米吟醸』のところで、主力は『一白水成』と『十五代彦兵衛』の2枚とお伝えしました。
となると、この『桜名月』はなんなのか。
その答えは、ラジオのなかにありました。
実はこの『桜名月』は、FMラジオの企画から生まれた日本酒なんです。
「企画から生まれた」と言われると一回限りだと思いますよね。
ですが驚くなかれ。
この企画、2024年で8年目を迎えます。
しかも、ラジオパーソナリティの面々が醸造に深く関わっているんです。
サポートなんて生易しいものではありません。
『ハナキン編集部』のパーソナリティである桜庭みさお氏、真坂はづき氏、椎名恵氏の3名が、酒づくりだけでなく米作りにまで携わっています。
種まき~ラベル貼りまでと考えると、いったいどれだけの時間を『桜名月』に費やしてきたのか。
きっと想像できないほどの苦労があったと思います。
さて、そんな『桜名月』ですが、『お祭り酒』では終わりません。
この1本、誇張抜きにして“2023年に飲んだなかでいちばん”でした。
秋田酒こまちの良いところがすべて詰まっています。
やわらかくて、やさしくて、重くない。
消える甘みがたまらない、飲んでも飲んでも飲みたくなる1本です。
ぜひ、春風とともに。
桜舞う晴天の日にどうぞ。
高清水 春の純米(秋田酒類製造)【春】
秋田の日本酒といえばやっぱり最大手。
忘れてはいけません、『高清水』です。
吉田類の酒場放浪記をみていると秋田の酒として高確率で登場する、あの『高清水』です。
そんな『高清水』から、春を告げる1本。
『春の純米』を紹介します。
まずこの1本、コスパが異常です。
720mlで1,132円(税込み)。
値上がりのつづく酒類業界で、買う側がひくほどの安価です。
しかも、味もすばらしいんです。
公式によると『春の純米』は、
“1年でもっとも水と空気が冷たい時期だからこそできた、秋田流寒仕込みの理想形を目指した1本”
『理想形』と言い切らないところは謙虚さか。
はたまた『藤岡弘、』氏とおなじく、『いまだ我、ならず』の精神なのかはわかりません。
ですが、いずれにしても志高くつくられた1本に他なりません。
味わいは、芯に鮮やかさ。
メロンのようなフルーティーさが“ぐわんっ”と来ます。
感じるのは、若くて青い果実感。
それも沁みないタイプのうまみなので、さらさらと入ってきます。
この飲みやすさと高いコスパは侮れないですよ。
大納川天花 純米吟醸 無濾過生原酒 ななつぼし(大納川)【春】
備前酒造本店から名を変え、大納川となって4年余り。
『天花』という新ブランドはさまざまな日本酒を生み出してきました。
なかでもおもしろく、そして秋田にはなかった1本がこの『ななつぼし』です。
ラベルにデザインされた北海道が表すとおり、『ななつぼし』は北海道のお米。それも酒米ではなく、飯米です。
「飯米でもお酒ってつくれるんだ」
と思われたかもしれません。
実は秋田でも『あきたこまち』をつかった日本酒が出始めており、食べるためのお米の価値が見直されつつあります。
とはいえ、もともと食べるためのお米です。
「味は酒米に劣るんじゃ……」と思いませんか?
私は正直、思っていました。
「いろいろ値上がりしてるしコスト的なものなのかな」と。
仕方なく使っているのだとばかり思っていたんです。
ですが、『ななつぼし』を飲んで冷や汗が出ました。
仕方なく使っているなどとんでもない。
青々とした酸に深いうまみ、甘み。
しっとりと仄かなガス感に、灰色のうまみがふっくらと乗ってきます。
キレイすぎない味わいだからこそ飲みごたえもあり、それでいて不思議と飲みやすい。
おいしいです、この1本。
また来年も買おうと思うほど、素敵な1本でした。
刈穂六舟 純米吟醸 サマーミスト(秋田清酒)【春~夏】
秋田の夏のはじまりを告げる号砲といえば、これこれ。この1本。
『刈穂六舟 純米吟醸 サマーミスト』です。
発売時期は4月下旬と、アパレル業界並みのスピードで売場へと駆けだします。
なにせ秋田の4月下旬は、まだ桜の頃。
売場には“お花見を意識したデザインの日本酒”がずらりと並んでいる頃です。
酒部門担当者としては、
「そろそろ売り切らないとマズい。夏酒がくるぞ!」
というタイミングです。
そんなタイミングですでにいるのが『サマーミスト』。
春酒でもなければ、夏酒でもない。
『サマーミストの頃』に発売される1本です。
味わいはというと、これまた飲みやすいんです。
さすがは六舟(ろくしゅう)の系譜。
六舟のスッキリとした飲みやすさ。そこにオリのうまみ、まろみ、重みが加わります。
よく冷やすことで凛とした口当たりが楽しめて、若々しいうまみが涼やかに喉を通る。
個人的には、毎年買ってしまうほど好きな1本です。
あなたもぜひ、『サマーミストの頃』を感じてみてくださいね。
刈穂 純米吟醸 龍湖(秋田清酒)【春~夏】
印象に残る秋田酒こまちといえば、この『龍湖』。
『生酒』と『火入れ』で発売時期が異なり、生酒は5月の発売となります。
実はこの1本、おもしろい試みが詰め込まれているんです。
その試みとはコンセプトにあります。
【酒造ではなく、秋田酒こまちを栽培している『味楽農場』さんが思い描く味わいをつくる】というものでした。
結果生まれたこの『龍湖』。
甘みと酸味のバランスがよく、力強さがあります。
さらにこの力強さが上品なんです。
秋田酒こまちの品の良さを壊すことなく、ぐぐっと伸びます。
なので、物足りなさがありません。
食中酒としてはもちろんですが、単体で飲んでも飽きることなくスイスイいけてしまいます。
正直イチオシ……なのですが……
唯一の難点をあげるとすれば、買える場所の少なさにあります。
秋田でも数店舗。
秋田市内だと旭南の『酒のこん』さんのみの取り扱いです。
なので、なかなか見かけることはないかもしれません。機会にも恵まれないかもしれません。
ですがもし縁があったのなら、ぜひ足を運んでみてくださいね。
やまとしずく 夏のヤマト(秋田清酒)【夏】
さて、夏を告げる酒となると、秋田清酒からぜったいに外せない1本があります。
それが『やまとしずく』の夏酒。夏のヤマトです。
この1本、
- 水色のデザイン
- 透明なビン
- 『夏』の文字
合わさってどう見ても『生酒』の顔をしています。
が、しかし。しかしです。
実は『夏のヤマト』は一回火入れ。
季節がそれを許さないだけで、その気になれば冷蔵庫ではなく冷暗所で保管できる1本なんです。
しかも、しかもですよ。
「私、純米吟醸です」という顔をしているのに、精米歩合60%の純米酒ときています。
2023年のものを例にとると、日本酒度は+2と中口寄り。
やや高めの酸度と合わせて甘みが抑えられており、爽やかながらも純米酒らしいうまみを感じる1本です。
難点としては、こちらもやはり販売は特約店のみ。
いわゆる地酒屋さんでしか買えません。
買うまでに手間はありますが、買う価値はまちがいなくある1本ですよ。
発売時期は5月中旬です。
ぜひ、今年。過ぎ去ってしまった方は来年。
お飲み逃しなく!
翠玉 純米吟醸 山田錦(両関酒造)【秋】
9月下旬に登場するのは、常識の外からきた1本。
『翠玉 純米吟醸 山田錦』です。
この1本、なんと……
酒米に『山田錦』が使われています。
「いや、そんな日本酒どこにでもあるやん」と思いますよね。
実は、この『翠玉』に使われている『山田錦』は“秋田県産”。
寒冷地で育てるのはむずかしいとされてきた、あの『山田錦』です。
出品用のお酒となると兵庫県産が猛威をふるう、あの『山田錦』です。
その『山田錦』が湯沢市にて栽培され、挑戦はついに実りました。
まず何より、とにかくおいしいんです。
うまみの濃さという部分でみれば、確かに兵庫県産には劣るかもしれません。
ですが、劣っていることが必ずしも不利ではないはずです。
寒冷地だからこそ出せた味わいが、この1本にはあるように思います。
なにせ、うまみがしっとり。
「俺は王様だ!」という強い主張はなく、謙虚なうまみが楽しめます。
それもずっと。
最初からずっとです。
舌で広がる前からすでにうまみがいるんです。
この1本、おすすめですよ。
まんさくの花 純米吟醸 MK-X(日の丸醸造)【冬】
一見すると日本酒に見えない『まんさくの花』の『MK-X』。
実はXYZの三部作となっており、XはMKシリーズの第一弾となります。
MKシリーズに共通するのは、きれいな酸味です。
これはもう『酸』ではなく『酸味』と言ってしまってもかまいません。
なにせ3種どれもが甘酸っぱい!
しかも、3種それぞれが異なった酸味を醸しだすんです。
たとえばMK-Yは、白ワインのような酸味。
MK-Zは、梅干しを思わせる酸味。
そしてこのMK-Xは、“バナナやパイナップルのような甘みのある酸味”と、感じ方がまったくちがいます。
そして何より、おいしいんです。
甘口のなかでも群を抜いて酸味とマッチしています。
2023年のものを数値でみれば、日本酒度は-8。酸度は2.7。
明らかに大甘口です。
なのに豊かな酸が寄り添って、バツグンの飲みやすさがもうたまりません。
私は2023年にはじめて飲んだのですが、なぜもっと早く飲まなかったのか。
なぜもっと早くに知れなかったのか。
悔やんでも悔やみきれないので、これから毎年追いかけることを決めました。
焼酎用の白麹をつかって独特な酸味を引きだした、この『MKシリーズ』。
その先陣を切ってXが出ます。
『初しぼり』や『新酒』の波を押しのけて12月、酒屋さんに並びます。
ぜひぜひ、お飲み逃しなくどうぞ。
杜氏 小番 特別本醸造(佐藤酒造店)【PB】
この1本を語らずに終わることなどできません。
16本目。大トリを飾っていただくのは、『出羽の冨士』が有名な佐藤酒造店さんの1本。
『杜氏 小番(こつがい) 特別本醸造』です。
この1本、珍しいけど確実に買えます。
しかも、通年商品です。
それなのになぜ16本目としてお伝えしているのか。
というのも実はこの『杜氏 小番(こつがい)』は、酒屋さんのPB(プライベートブランド)。
それも『菅久商店』さんのPB(プライベートブランド)なんです。
場所は、秋田駅前。ホテルα‐1の裏手。
秋田長屋酒場さんの斜め向かい。
県内の酒好きだけでなく観光客も訪れるので、秋田市でいちばんにぎやかな地酒屋さんなのではないでしょうか。
そんな『菅久商店』さんのレジ奥に、常温で鎮座するのが『杜氏 小番』です。
「ちょうどいい」「程良い」という言葉は、このお酒のためにあるのかもしれません。
なにせこの甘み、明るいんです。
重くもなく口当たりがやさしくて、飲みやすい。
ここが日本酒の中間なのではないかと思うほど、「ちょうどいい」と感じました。
さらにさらにこの『杜氏 小番』、飲み方を選ばないんです。
常温はもちろん、冷やしても良し。
燗でももちろんいけちゃいます。
むしろ『燗』を強くオススメさせてください。
夏は冷たくして、冬は温かくして。
どんな日にでも寄り添える『特別本醸造』を、ぜひぜひぜひ一度、ご賞味ください。
16本のなかから選ぶ筆者のイチオシがこれだ!
この見出しを書いているときに思いました。
絞りきれないから16本にしたのに1本なんて選べるかよ、と。
正直、ひどく後悔しています。
ですが書いてしまったものは仕方ありません。見出しに沿ったものを書かねばなりません。それがブログのルールです。
なので、部屋のなかをひたすら歩き回りながら2本まで絞りました。
「絞りきれてないじゃん(笑)」
ごもっともです。
ですがちょっと待ってください。
せめて、せめて通年商品と限定商品から1本ずつ選ばせてください。
何卒……ッ!!
というわけで、まずは通年商品から1本。
選ぶとすればこちらです。
『特別純米酒 うまからまんさく』(日の丸醸造)
この1本を選んだ理由は3つあります。
ひとつは、辛さとうまみのバランス。
ひとつは、蔵人がもっとも愛飲しているというエピソード。
そしてもうひとつが、“買える場所を選ばないところ”です。
『特別純米酒 うまからまんさく』は、スーパーでも買えます。量販店でも買えます。大手の酒屋ならたいてい売っています。
日々の買い物のなかで買えて、名前のない料理にも合う。
日常に寄り添うお酒って、そういうお酒ですよね。
私ね、この『うまからまんさく』が大好きなんです。
手書きのPOPにも書きましたが、常に置いておきたい。
だから私はこの1本を選びました。
そしてもう1本。
季節限定、数量限定からはこの1本を選びます。
『純米吟醸 桜名月』(福禄寿酒造)。
選んだ理由は、忖度なしで“味一択”です。
本当においしかった。
飲んでも飲んでももっと飲みたくて、飲んでも飲んでもまったく飽きません。
秋田酒こまちが持つ『上品に消えていく甘み』を、物足りないと感じさせなかったんです。
ただただ上質で明るい秋田酒こまちが、これでもかと言うほど堪能できました。
もう一度だけ言わせてください。
本当においしかった!
4月上旬には店頭に並びはじめるので、ぜひぜひお飲み逃しなくどうぞ。
350銘柄から選ぶ、飲みやすい秋田の日本酒16選:まとめ
この1文を読んでくれているということは、9000文字にも渡るこの記事を読みきってくださったんですね。
とんでもない長さでしたよね。
ありがとうございます。本当にお疲れさまです。
さて、秋田の日本酒業界ですが、チャレンジ精神にあふれる蔵が多いです。
飯米を使ったり、県外の酒米で仕込んだり、去年とはまったくちがう造りをしてみたり。
「今年はこうしてみました」
という試みが、あちこちで見受けられます。
『350銘柄飲んだ』
少しでも記事に深みを持たせようと思って書いた上記のワードには、なんら大きな力はありません。
恥ずかしながら、まだまだ飲んだことのない秋田の地酒がたくさんあります。
しかも、毎年新しいお酒が出てきています。
それでもあなたに、少しでも。
少しでも「このお酒がおいしかったよ」と伝えられたらいいなと思い、この記事を書きました。
読んでくれた時期によっては売っていないお酒もありますし、欲しいと思っても時期が合わないこともあります。
なので、四季が移り変わるタイミングでこの記事を思い出していただけるとうれしいです。
もう一度読むのは大変だと思いますので。
ではでは、今回はこのへんで。
長々とお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
今日も良い晩酌を。