こんばんは、いしかわです。
『山本』からちょっと珍しい雰囲気の1本が発売されましたね。
その名も『天杉』。
ラベルにも書いてあるとおり木桶で仕込んだ1本なのですが、実は、珍しいのはそこだけではなかったんです。
ちょっと詳しく見ていきましょう。
『山本 山廃純米 天杉』ってこんなお酒
『天杉』とはそのものズバリ『天然の秋田杉』のことで、山本の木桶には『樹齢200年を超えるもの』が使われています。
秋田杉の大きな特徴は、年輪の間隔が狭いこと。
なのですが……私は門外漢なので、専門的なお話はやめましょう。
秋田杉の特徴といえば、やっぱりこれです。
木目の美しさ。
その美しさは『天杉』のラベルにも表れています。
というのも『天杉』のラベル……
実は、『木桶の表面を撮影したもの』がそのまま背景に使われているんです。
そういうデザインかと思いきや、まさかの本物。すごいですよね。
そして手書きPOPにも書いたのですが、この木桶。唯一無二です。
平成24年に天然杉の伐採が禁止されたことで、新たに作ることはほぼ不可能になりました。
そのため、山本の木桶がただひとつ。
『天杉の木桶』となります。
さて、そんな『木桶』で仕込んだ『天杉』ですが、特筆すべきことがまだまだあります。
実はこの1本、精米歩合が70%です。
ちょっと意外ですよね。
『山本』といえば『ピュアブラック』や『ミッドナイトブルー』など、精米歩合60%以上の純米吟醸が多い印象があります。
そんななかで、『山本』を冠した70%。
そこにはこんな理由がありました。
「本当は高精白でいきたいけど、高級酒になると私の口に入らない。たくさんの人に木桶の酒を楽しんでもらいたいので、あえて磨かない選択をした」
前半はユーモアだと信じましょう(笑)
飲み手への配慮が100です。……100です。
ともあれ実際、コストパフォーマンスが本当に高いんです。
なんと、720mlで1,500円 ※2025年8月の価格
日本酒の値上がりが著しい今、この価格は良い意味で強気なのではないでしょうか。
買いやすい。手に取りやすいというのも、この『天杉』の魅力のひとつと言えそうですね。
『山本 山廃純米 天杉』を飲んでみて
この1本の味わいを一言であらわすのならこうなります。
“無理”
いや、ちがう。ちがうんです。待ってください。
複雑な味わいすぎて書けないとかではないんです。
一言にすると長くなるので避けようと思っただけなんです。
“口にふくむとピークが即来て、ベリー系の香味と甘みがグッと広がり、豊かな酸で引き締めてキレていく”
ほら、長いでしょう。
だからちょっとだけ区切って、ちょっとだけ肉付けしていきます。
香りはぺったりと伸びるベリー系で、ほんのりと乗る酸。
口にふくむとファーストタッチからうまみが濃いです。
精米歩合70%とは思えないやわらかな質感から、驚くほど甘みが出てきます。
この、やわらかな質感がすごいんですよ。
ふつう70%精米のお酒って、あまり舌に沈みません。じわっと広がるものがない。舌でほどけない、とでも言いましょうか。
だから味に、奥行きを感じづらい印象がありました。
『心白』以外の部分もたっぷりと含まれてしまうから、雑味が邪魔をしているのかもしれません。
が。
しかし。
But!
この『天杉』にはあるんですよ。広がる味わい。ほどけるうまみ、奥行きが、です。
だから味わいが濃いんです。
先ほど『驚くほどの甘みが出てくる』と言いましたが、この甘みに慣れてくると『酸のきれいさ』が前面にきます。
この山廃らしい酸の引き締めがたまりません。
こってりとした甘みを残さないので、グラスがどんどん進んでしまいます。
きょうかい1号酵母の濃い香りと、美山錦の濃いうまみ。山廃仕込みによる濃い酸。
そして、山本の仕込み水と技術。
どれもが合わさって、70%精米にはない『うまみ』と『飲みやすさ』を生んでくれていました。
好きだ~、この1本。
『山本 山廃純米 天杉』の商品情報
- 使用米:秋田県産美山錦
- 精米歩合:70%
- アルコール分:15度
- 酵母:きょうかい1号酵母
まとめ:ハイコスパにしてうまみの奔流。しかも飲みやすい。
以前、行きつけのお店で『山本3種飲み比べ』を頼んだのですが、そのなかの1本がこの『天杉』でした。
この日の衝撃を忘れることはないでしょう。
なにせ、残りの2本が何だったか忘れてしまっているのですから。
覚えているのは、
『天杉』がうまかった。
この事実だけです。
『きれいな濃さ』が、しっかりと記憶に刻まれています。
断トツで印象に残る味わいでした。
この『断トツ』をぜひ、あなたにも。
それでは今回はこのへんで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ではでは。
※山本といえばこれも外せませんよね。