『小野こまち 特別純米酒』の感想・レビュー:飯米の人懐っこさが、季節問わない味わいに

一滴千両(秋田県醗酵工業)
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こんばんは、いしかわです。

 

この1本、まず価格に驚きますよね。

720ml:1,205円(税抜) ※2025年現在

値上がりの続く日本酒業界において、この価格は破格も破格です。

 

とはいえ、『安かろう悪かろう』という言葉もあります。

肝心なのはやっぱり味ですよね。

ちょっとだけ詳しく見ていきましょう。

 

『小野こまち 特別純米酒』ってこんなお酒

『小野こまち』は、湯沢市の秋田県醗酵工業がつくる『特別純米酒』、『大吟醸』、『純米大吟醸』からなるシリーズです。

 

ネーミングの由来はもちろん、平安六歌仙の『小野こまち』から。

あの『古今和歌集』にも歌が収められているほど著名な歌人……と言いたいところですが、やっぱりロマンはこちらにありますよね。

“世界三大美女”

クレオパトラ、楊貴妃とともに数えられ、絶世の美女というイメージが強いのではないでしょうか。

 

そんな美しき名を冠した『小野こまち』シリーズ。

特別純米酒には、『あきたこまち』と『秋田酒こまち』が使われています。

飯米、酒米の違いはあれど、どちらも秋田が誇るなじみのあるお米です。

 

そしてこの1本。

調べてはじめて知ったのですが、実は『生酛仕込み』なんです。

 

『生酛仕込み』とは、『酒母』づくりの際に空気中の乳酸菌を頼る方法をいいます。

というのも、日本酒の発酵には『酵母』の働きが不可欠。

ですが『酵母』は、大量のお米のなかに入れてしまうと、雑菌によって増える前に死んでしまいます。

そのため最初は少量から。

少ないお米のなかに『酵母』を投入します。

 

「ん? 少量だろうと雑菌は増えるんじゃ……」

 

と思われたかもしれません。

実はその通りなんです。

そのため『酒母』をつくるためには、『酵母』が増殖できる『土壌』をつくってあげなければなりません。

この『土壌づくり』こそが、仕込みの分かれ目。

いまの主流は『速醸酛』と呼ばれ、醸造用に開発した『乳酸菌』を『先に』入れてしまう方法です。

こうすることで、雑菌がそもそも増えない環境をつくることができます。

 

対する『生酛』は、空気中の『乳酸菌』に頼る方法です。

最初のうちは雑菌の繁殖力のほうが強いのですが、少しずつ『乳酸菌』はチカラを増していきます。

約2週間もすれば、かんぜんに逆転。

雑菌は死滅し、生存戦争を勝ち抜いた『乳酸菌』が残ります。

 

速醸酛が『知』で対抗するインテリだとすると、生酛は『暴』で対抗するグラディエーター。

その『乳酸菌』にはパワーがあります。

この『戦い抜いた乳酸菌』こそが、生酛特有の『どっしりとした味わい』に繋がるというわけですね。

 

「雑菌がそもそも増えない環境をつくってしまえばいいのです」(速醸酛)

「雑菌? 2週間くれや。滅したるわ」(生酛)

 

頼もしいですね(丸投げ)

 

『小野こまち 特別純米酒』を飲んでみて

この1本の味わいを一言であらわすのならこうなります。

 

“静かなうまみのやや辛口”

 

香りはわずかで、味わいは米のうまみからほんのりとフルーティーさが覗きます。

ガス感はなく、全体的にやや静かな味わい。

いい意味でコクがないので、あっさりとした余韻にグラスが進みます。

『あきたこまち』のやわらかさと人懐っこさが、季節問わず飲める味わいを生んでいました。

 

熱燗にすると、さっぱりほっこり。

コクは弱くて、一杯をスイスイ飲んでいくタイプです。

冷やして飲んだときは『やや辛口』に感じましたが、燗にすると『かなり淡泊な中口』といった印象でした。

『あきたこまち』ならではの軽い口当たりが、そのまま燗になっているように感じます。

『酢だこ』や『漬物』と合わせてみたのですが、お酢との相性が良さそうですね。

 

とはいえ、とにかく“飲みやすい”1本です。

こってりとした味付けには負けてしまいますが、醤油や塩、酢。

日常のなかの“あっさりとした味付け”には合いそうです。

飲む際、頼む際の参考にしてみてくださいね。

 

『小野こまち 特別純米酒』の商品情報

  • 使用米:あきたこまち、秋田酒こまち
  • 精米歩合:60%
  • 仕込み:秋田流生酛仕込
  • 日本酒度:+3
  • 酸度:1.5
  • アルコール分:15%

 

まとめ:大手ならではの圧倒的なコスパ。飲み方自由でどうぞ

ものすごく正直に言うと、飲むタイミングが限られる1本かなと感じました。

日本酒の品ぞろえが良いお店であれば目が移りますし、季節限定、数量限定品があればそちらを選びます。

「今しか飲めない」と差し置いて飲むかと言われれば難しいかもしれません。

 

ですが、秋冬。

熱燗の時期には選択肢に入れたい1本です。

というのも燗向けのお酒って、どこかこってり。冷酒で飲むと雑味が多く、燗で飛ばして飲むものが多いように感じます。

そんななかこの『小野こまち 特別純米酒』は、淡泊できれい。

この酒質がそのまま燗になるので、きれいな味わいの熱燗が楽しめます。

 

“心がホッとするさっぱり感”

 

寂しさを感じる頃に、ふと飲みたくなる味わいですよ。

 

それでは今回はこのへんで。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

ではでは。

 

※ちょっと前の記事ですが、熱燗で飲みたい秋田の日本酒をまとめているので読んでみてね。

 

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