こんばんは、いしかわです。
この1本を語るのなら、スーパーの酒担当者時代まで遡らなければなりません。
かつて売っていて感じたのは、こんな印象でした。
- とにかく安い
- 特別な時期でなくとも売れる
- 逆に、特別な時期に売れない
特別な時期とは、盆、暮れ、正月。
地酒がもっとも売れる時期であり、高級酒がバンバン売れていく時期でもあります。
まさに、かき入れ時です。
そんな時期の『天の戸 吟泉』は、売場で静かに過ごします。
出番はなく、本番はかき入れ時のあと。
人々が日常に戻ったころから売り上げが上がっていきます。
そのため私が『天の戸 吟泉』に抱く印象は、
『ミスター普段使い』
パック酒の存在を亡き者にするハイコスパ、という風に見えていました。
そんな1本が、いま手元に。
ちょっと詳しくみていきましょう。
『天の戸 純米酒 吟泉』ってこんなお酒
『天の戸 吟泉』は、横手市の浅舞酒造がつくる純米酒です。
販売時期は、通年。
公式価格が720ml:1,100円(税込み)と、高いコストパフォーマンスを誇ります。
天の戸シリーズのなかでは新しいイメージ……だと思っていたのですが、受賞歴をみれば間違いだと気づかされます。
『燗酒コンテスト2013、2015、2016:金賞』
遡れば12年もの歴史がある1本でした。
今はもう無くなってしまったのですが、公式サイトでは自社製品を4つのタイプに分けていました。
4つのタイプは以下のとおりです。
- フルーティー
- すっきり
- ふくよか
- コクがある
さらにそれらを、『香りの高低』『味の濃淡』で分けてグラフにしていました。
当時のグラフによると、『吟泉』は『すっきり寄り』。
すっきりという括りのなかでも、ちょうど中間に位置していたんです。
香りは高すぎす低すぎず。
味は濃くも薄くもなく。
「これはもしかして、特徴がないのでは!?」
ちょっと待ってください。
感想にいきましょう。
『天の戸 純米酒 吟泉』を飲んでみて
この1本の味わいを一言であらわすのならこうなります。
“うまいまずいというよりも、ひたすら進む酒”
香りは穏やかで、グラスからは果実感よりもお米らしさが漂います。
フルーティーさは、ほぼ0です。
味わいは、ややしっかりとした酸と膨らみ。
他の味わいが弱いから突き出ているように感じる。そんな印象です。
甘みは舌よりも鼻から感じました。
全体的に静かな味わい。
それは熱燗にしても大きくは変わらずで、静かなままオイリーになります。
これが、いいんです。おいしいんですよ。
けっして盛り上がる味わいではありません。
ですが、『おいしい』がのんびりと続きます。
なんだかホッとする味わいで、これが日常。「普段使いってこうだよな」と思わせてくれました。
ただ、冷めてくると酸が立ってくるので、ぜひ熱いうちに。
『燗冷まし』ではなく『◯◯燗(お好みで)』で飲みきるのがオススメですよ。
『天の戸 純米酒 吟泉』の商品情報
- 原料米:秋田県産米
- 精米歩合:65%
- アルコール度:15.5%
- 日本酒度:+2.3
- 酸度:1.8
◯参考価格
720ml:1,100円(税込)
1.8L:2,200円(税込)
※2025年現在
まとめ:普段使いにオススメな、燗で長く盃を進めたい1本
スーパーに来る人は、日常を支えるものを買いに来ています。
日本酒の売場だってそうです。
売上の上位はすべて1,500円以下で買えるものでした。
そのため公式サイトにある
“晩酌の定番酒としてお勧め”
の文字は、「まさに!」の一言。
特別な日は特別な1本を。
飲みたい1本がある日は、飲みたい1本を。
何もない日は『吟泉』を。
飾らない1日の締めに飲んでみてくださいね。
それでは、今回はこのへんで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ではでは。
※普段使いしやすい日本酒をまとめているので、あわせて読んでみてね。