こんばんは、いしかわです。
ずいぶん昔から『純米大吟醸』として君臨していた気がします、『天巧』。
カートン入りが当たり前で、常に『贈答用』のイメージがついて回りました。
なので、『味』ではなく『質』。
『自分用』ではなく『他人用』。
そんな縁遠いイメージが拭えなかったんです。
ところがどっこい。
どっこいですよ。
まだ記憶に新しい2024年。
すべての市販酒から最高の1本を決める『サケ・コンペティション』において、『天巧』はとんでもない成績を叩き出しました。
選ばれた理由はもちろん、『味』です。
ちょっと詳しくみていきましょう。
『太平山 純米大吟醸 天巧』ってどんなお酒?
『太平山 純米大吟醸 天巧』は、さかのぼること1989年生まれの純米大吟醸。
実は30年以上の歴史をもつ、平成とともに駆け抜けた1本です。
『贈答用』として生まれたので、最初は1.8Lのみの展開でした。
この平成初期はまだタンク貯蔵が主流です。
そんな時代に小玉醸造はいち早く『瓶貯蔵』を取り入れ、火入れの方法も見直しました。
火入れから『急冷』して、香味を飛ばさずフレッシュさも残す。
より良いものにするための企業努力を、商品になるまでの流れに詰めていたんです。
そして何より、大手ならでは『安定感』も語らずにはいられません。
実はこの『天巧』……
『品評会用の酒母』と『家伝生酛造りでつくった酒』を調合することで、酒質を安定させています。
この“変わらぬ味”をつくる努力もまた、30年以上も評価され続ける理由と言えそうですね。
とはいえ。
とはいえです。
はたして、“変わらぬ味”で時代をひとつ跨げるでしょうか。
目まぐるしくトレンドは変わり、次々と若手が台頭してくるこの令和です。
『昭和』のうまい。『平成』のうまいで生き残れるのか。
その答えは酵母にありました。
はじまりの『天巧』には協会9号が。
そこから『AK-1』⇒『M310』へと変わっています。
『M310』って、秋田ではあまり耳馴染みがないですよね。
それもそのはずで、『M310』は茨城生まれ。
水戸の明利酒類が生んだ大吟醸向けの酵母なんです。
明利酒類といえば、『百年梅酒』『副将軍』で有名な総合酒類メーカー。
協会10号酵母を生んだ蔵としても知られています。
協会10号は秋田の『天の戸 ランドオブウォーター』にも使われているので、もしかしたら一度はその名を目にしているかもしれません。
その10号からさらに進化させ、より香り高い酵母として評価を得たのが『M310』なのだそうです。
とはいえ。
とはいえですよ。
酵母を変えただけで、サケコンペやKuraMasterで評価されるでしょうか。
それも、いずれの獲得も2024年です。
もう近々。令和ど真ん中です。
そんな新しい時代に、フランス人がフランス人のために選ぶ『KuraMaster』では最高賞を。
最高の市販酒を決める『サケ・コンペティション』では、純米大吟醸部門において『2位』の成績をおさめています。
それも、全国から集められた334本からです。
審査方法はブラインド。ラベルを隠してのテイスティングです。
そんなブランド力の一切通用しないコンテストで、確かに選ばれた。
それはもう、酵母がどうとか言う話ではないのではないでしょうか。
ただ単に、小玉醸造がすごい!
いち早く良質な純米大吟醸に着手して、手を変え品を変えブラッシュアップしてきた小玉醸造だからこそできた1本。
それが『天巧』なのではないでしょうか。
きっと『天巧』はこの先、またひとつ時代を跨いだとしても消えることありません。
洗練しつづけ、『今までのうまい』と『これからのうまい』を見事に融合させるのだと思います。
なので、いつ飲んでもうまい。
“味と香りが離れない圧倒的なバランス”
この非の打ち所がない味わいを、ぜひ一度は飲んでいただきたく思います。
『太平山 純米大吟醸 天巧』の商品情報
- 使用米:山田錦100%
- 精米歩合:40%
- アルコール分:16度
- 酵母:M310
- 日本酒度:+2
- 酸度:1.5
まとめ:贈答用の前に自分で飲んでほしい、非の打ち所がない1本
どんなお酒かをお伝えしたら満足してしまったので、感想を飛ばしてここまできてしまいました。
たぶん、これまでの記事で初めての事だと思います(笑)
このままいきましょう。
最後にひとつだけ、これに触れさせてください。
『太平山 純米大吟醸 天巧』の『天巧』とはなんぞや?
『天巧』には、自然のたくみ。『自然の力でできた見事なもの』という意味があります。
日本酒は微生物がつくるもの。
生酛造りであれば特に自然の乳酸菌に頼りますし、まさに『天巧』。わかります。
ですがそれも、人の手があってです。
『天巧』には、人の努力があります。
30年以上戦い抜いて今なお評価され続けるのは、人の知恵があってこそです。
なので『天巧』は、自然と人の手でできた見事なもの。
素晴らしき1本なのだと感じました。
この1本、ぜひ、あなたにも。
それでは今回はこのへんで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ではでは。
※サケ・コンペティション2025の純米酒部門で9位に輝いたこちらもどうぞ!