こんばんは、いしかわです。
2022年1月14日。
秋田県醗酵がやってくれました。
“朝しぼり”
という新たな試み。
この1本、『しぼりたて』とは訳がちがいます。
一般的な『しぼりたて』と名付けられる日本酒は、しぼって間もない日本酒のことを言います。
新酒の頃に出てくることが多く、『初しぼり』的な意味合いで使われることが多いです。
また。冬酒をイメージさせるために使われる単語でもあります。
なので、しぼってすぐにビン詰めした訳ではありません。
『しぼりたて』は、必ずしも『しぼりたて』ではないんです。
では、今回の1本はどうなのか。
この“朝しぼり”は、まさにホントの『しぼりたて』。
“朝しぼり”という名前は、
“その日にしぼったお酒を、その日のうちに届ける”
という意味でつけられています。
これまで、しぼったばかりの日本酒を飲むのは蔵人だけ。造り手だけに許された特権でした。
そんな貴重な1本がついに、飲み手まで降りてきました。
このワクワク。
この高揚は、酒蔵見学をしたことのある方なら尚更刺さるのではないでしょうか。
できたての味わい。
新鮮そのものな味わい。
あの感動が、この“朝しぼり”には詰まっています。
ちょっと詳しくみていきましょう。
『一滴千両 純米大吟醸 朝しぼり生原酒』ってどんなお酒?
そもそも秋田の地酒で一滴千両……あまり馴染みがないのではないでしょうか。
『一滴千両』とは、湯沢市にある秋田県醗酵工業がつくる日本酒のブランドです。
秋田県醗酵といえば、『そふと新光』や『あいぼう』のような焼酎が有名ですよね。
最近では秋田杉を使ったクラフトジンを開発し、そちらで気になっている方も多いのではないでしょうか。
かつては盛んにCMを入れていた、『米蔵』を覚えている方も多いはずです。
「米蔵、炊けました」
このフレーズは、30代後半の私でも覚えています。
ただそれだけに、秋田県醗酵に日本酒のイメージはなかったんですよね。
あったとしてもパック酒。
- 酔友達
- とんとん拍子
- 瑞響大太鼓
- ふるさとの酒だより
などなど、内容量が優先の大手メーカーというイメージでした。
なので『一滴千両』もまた、パック酒という印象だったんです。
ですが近年、『一滴千両』というブランドは大きな変化を遂げています。
進化といってもいいかもしれません。
なにせ大手です。
精米歩合40%、50%の日本酒をコスパ良く提供してくれますし、クラフトジンは時代に一石を投じました。
「秋田県醗酵がおもしろくなってきた」
そんなときに、“朝しぼり”です。
“朝しぼり”のスペック自体は、秋田酒こまちを50%までみがいた純米大吟醸。
2022年の場合は1月14日の深夜に“もろみ”をしぼり、早朝にビン詰め、生酒の状態で即出荷されました。
と、文章にすれば1文に収まってしまいます。
ですが、この1文にいったいどれだけの努力があったのか。
この“朝しぼり”は、蔵人の努力の結晶です。
なぜなら、
“その日にしぼり、その日に出荷する”
というのは、失敗が許されないからです。
タイムリミットは早朝。
それまでに出荷の全工程をクリアしなければなりません。
- しぼり
- 分析
- ビン詰め
- 打栓
- ラベル貼り
- 梱包
そして、出荷です。
必要なのは淀みのない流れ。
そのため、集められたのはベテランのみで、それも少数だったといいます。
まさに少数精鋭です。
滞りのない流れをつくり、少人数ですべての工程を切り抜けた1本。
それこそが、
【一滴千両 純米大吟醸 朝しぼり生原酒】
なんです。
実際に飲んでみた感想は?
『一滴千両 純米大吟醸 朝しぼり生原酒』の味わいを一言であらわすのならこうなります。
“フレッシュ!!!”
まず、とにかく香りがいいんです。
新鮮で素直。
フルーティーという言葉が、社交辞令ではなく心から似合います。
あなたもこんな経験はありませんか?
「フルーティーって感じではないけど他に言い表せないし、とりあえずフルーティーと言っておくか」
なんとも言いあらわせない香りってありますよね。
なんの香りかはわからない。
だから、とりあえずフルーティーで括っておこう。
ぶっちゃけた話、私にはよくあります。
ですがこの『朝しぼり生原酒』は、胸を張って言えます。
フルーティーなんです。
鮮やかで甘みのある香りは、フルーツ由来としか思えない艶やかさがあります。
そしてこの1本、ぜひグラスで飲んでください。
薄いにごりが見られますから。
しぼってすぐのお酒というのは、ほぼ必ず薄くにごっています。
その状態から数日置くことで、“にごり”はタンクの底に沈殿。上澄みのほうは澄んだお酒になります。
なので薄いにごりは、しぼって間もない証です。
濾過する蔵もあるので「すべてのしぼりたてがそう」とは言えませんが、ひとつの目安として記憶の隅に置いてみてくださいね。
そして、肝心なのが味わい。
もうね、これです。この一言に尽きます。
「めっちゃおいしい」
そもそも単純に、秋田酒こまちを使った日本酒としておいしいです。
秋田酒こまちでつくったお酒は、
“香り高く上品な甘みがあり、旨さと軽快な後味をもつ”
と言われています。
まさに。
まさにです。
鮮やかで明るくて、口当たりはやわらか。
ふわっと軽い甘みとうまみは、秋田酒こまちらしさが満載です。
後味にキレはありません。
余韻としてあるのは、消えていく甘み。
ゆっくりと消えていくので、くどさは一切ありませんでした。
食中酒というよりは食前、食後酒としてオススメしたい1本です。
『一滴千両 純米大吟醸 朝しぼり生原酒』の商品情報
- 使用米:秋田酒こまち100%
- 精米歩合:50%
- アルコール分:16度
- 保管方法:要冷蔵
- 分類:生酒
『一滴千両 純米大吟醸 朝しぼり生原酒』の評価・レビューまとめ
ということで、まずは普通に『秋田酒こまち100%の日本酒』としておいしい1本でした。
だからといって、それだけで“一滴に千両の価値がある”とは言いません。
特筆すべきは“かけた労力”、そして“熱量”です。
“その日にしぼって、その日に届ける”
それを可能とした蔵人たちの熱意、モチベーションにこそ価値があるのではないでしょうか。
秋田県醗酵工業の蔵人のみなさまは、本当に大変だったかと思います。
時間に追われるなかで精密さと丁寧さを求められ、思うようにいかない時間帯もあったかもしれません。
ですが『朝しぼり生原酒』は、確かにこうして飲み手のもとに届いています。
うまかったです。
買うところから飲み終わりまで、ずっとワクワクする1本でした。
心から、ごちそうさまでした。
それでは今回はこのへんで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
いしかわでした。