こんばんは、いしかわです。
「この銘柄に触れる必要はないんじゃないか」
私にはそう思っている銘柄がいくつかあります。
それはきっと、あなたにも想像がついてしまう銘柄です。
希少価値が高まってしまい、『飲めた』『買えた』がステータス。ここで紹介しても「どこで買えるのかわからない」では意味がありません。
評価基準が曇ってしまった銘柄なので、ここで取り上げることはないかと思います。
ですが、花邑は。
花邑は今、だいぶ手に入れやすい銘柄になったのではないでしょうか。
特に『雄町』や『陸羽田』。
はじまりの『花邑』は、特約店で十分な本数が確保できているように見えました。
ということで『雄町』。いってみましょう。
『花邑 純米吟醸 雄町』ってどんなお酒?
『花邑』は2011年、両関酒造より『雄町』と『陸羽田』を引っさげて現れました。
その勢いたるや、まさに彗星。
あの『十四代』の高木社長より技術指導を受けた。
ネーミング、ラベルデザインまでもが高木社長によるもの。
今まで大衆酒として有名だった『両関』の、起死回生の一手。
そんな情報が早くも出回ります。
加えておもしろかったのが、まことしやかに囁かれたこんな噂です。
「技術指導を受けてなお蔵のこだわりは曲げず、甘口に仕上げた」
話題が話題を呼び、日本酒好きのボルテージは一気に上がりました。
しかも、特約店限定のお酒は多々あれど、花邑は当時1.8Lのみの展開。
とにかく入手がむずかしく、出始めからすでに『珍しい酒』という立ち位置ができつつあったんです。
私も当時は買うことを諦めており、トピコ2Fの『あきたくらす』で運よく飲めたにすぎません。
発売当時はまだ平成。
まだ『辛口』が優勢だったように思います。
そんな時代に『-6度(当時)』の大甘口で勝負に出たのが、この『雄町』でした。
試しに飲んでみると、ズシリと甘い。
一杯の半分でも十分なくらいの味だったんです。
「こんなにいらないかな……」
というのが正直な感想でした。
ですがそれもそのはずで、『花邑』のコンセプトにはこの考え方があったんです。
「一杯で記憶に残る味わいを」
まさに、でした。
あれから14年あまり。
再度飲んでみて驚きました。
『花邑 純米吟醸 雄町』を飲んでみて
この1本の味わいを一言であらわすのならこうなります。
“ひとくちのなかの雄町が濃い!”
鮮やかな香りというよりは、どこか熟した果実のような香り。
熟れたメロンのような満足感が香ります。
味わいは雄町らしく、酸には独特なクセを感じました。
この酸が両関らしい甘みと共に伸びやかで、しかも透明感をもって喉をとおります。
なので、濃くも飲みやすい。
いつか飲んだ時よりもずっと甘みが澄んでいて、とろみがキレイでした。
もしかすると、『重み』という点では昔と変わらないのかもしれません。
ですが重みの『質』がちがいます。
1キロの鉄と1キロの綿。
重さはおなじでも、その質感はまったくちがうはずです。
『花邑 純米吟醸 雄町』もそう。
発売からずっと変わり続けてきたのだと思います。
『完成』に甘えることなく、ずっとブラッシュアップされてきたのではないでしょうか。
あの日感じた「半分で十分」という気持ちは、もうありません。
一杯に感じた美しさ。
圧倒的な満足感。
飲んだ人に「やっぱりすごいな」と思わせる、評判とズレのない味。
ほんとうにお見事でした。
おいしかったー!
『花邑 純米吟醸 雄町』の商品情報
- 使用米:雄町100%
- 精米歩合:50%
- アルコール分:16度
- 日本酒度:-7.7(2025年)
- 酸度:1.4(2025年)
- 酵母:非公開
まとめ:入手困難から少しずつ、買える地酒に
「一杯で記憶に残る味わいを」
まさに、でした。
観光客が飲めば、すぐにまた思い出すのではないでしょうか。
地元民だってそうです。
あれば頼んでしまう魅力があります。
ただもしかしたら……
もしかしたらご年配の方には甘すぎるかもしれません。
特に、冷えが甘くなってきた頃。
人間は体温に近いほど甘く感じる性質があるので、常温に近づくほど甘みを濃く感じます。
なので、ご一緒される方の分も頼むかは要相談で。
「甘口も辛口もオールOK!」という方は、ぜひこの1杯を。
『ひとくちのなかの雄町』と『一杯の満足感』を、ぜひぜひ堪能してくださいね。
この1杯は間違いなく記憶に残りますから。
それでは今回はこのへんで。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ではでは。
※『陸羽田』の感想もあるので、お手すきの際にでも読んでみてね。