【両関 純米酒 裏銀紋】燗でおねだん以上の価値がある【感想・レビュー】

両関 裏銀紋の感想・レビュー 秋田の地酒
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こんばんは、いしかわです。

 

この1本、気になっている人も多いのではないでしょうか。

銀紋ならぬ、“裏”銀紋。

両関でむかしから飲まれている『銀紋』の裏バージョンということなのですが、そんなことよりもまずは言わせてください。

 

「読めねぇ」

 

ラベルを目にした瞬間、思いました。

印刷ミスってますよ、と。

 

ですが、安心してください。

ラベルはこれで大正解。伝えたいことは『裏』であるところにあります。

 

この記事では裏銀紋がどんなお酒で、なぜ安いのか。そして、実際に飲んでみた感想をお伝えしていきます。

タイトルですでにバレていますが、おねだん以上の価値がある1本です。

ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

 

『両関 純米酒 裏銀紋』ってどんなお酒?

両関酒造といえば、地元素材にこだわった『翠玉』シリーズや、さらに限定性のつよい『花邑』が有名ですよね。

でも、もっと古く。

もっとむかしから親しまれてきたのが、今回紹介する1本の表である『銀紋』。

普通酒です。

 

普通酒といえば、あまりいいイメージはないかもしれません。

糖類、酸味料など、添加物の宝庫。

『安酒』という印象はまだまだあります。

 

ですが『銀紋』は、ただの普通酒ではありません。

原材料は、米、米麹、醸造アルコール。

本醸造とくらべてもなんら遜色のない、混じりっけなしの普通酒なんです。

 

そんな『銀紋』ですが、今回は『裏』。

純米酒にして価格が1,430円(720ml)と、高いコストパフォーマンスを誇ります。

はたしてその特徴はどこにあるのか。

すこしだけ触れてみましょう。

 

『裏銀紋』のラベルにはアルファベット表記でこのようにあります。

“アッサンブラージュ”

 

アッサンブラージュとは「立体的なもの」を集めて、

 

  • 積み上げる
  • 貼りつける
  • 結びつける

 

などの方法でつくられた芸術や技法のことをいいます。

「立体的なもの」ならなんでもOK。

材料費がかからないことから空き缶や空き瓶がつかわれることもあり、「ジャンクアート」としても捉えられています。

 

とはいえ、これだけでは日本酒との関わりがまったく感じられませんよね。

ところがどっこい。

アッサンブラージュのもともとの意味を辿ればグッと近づくんです。

 

実はアッサンブラージュとは、フランス語で『ブレンド』の意。

ワイン醸造ではよく使われる伝統技法で、“原酒をブレンドすること”をいいます。

 

なので『両関 裏銀紋』の場合は、ブレンドするのはブドウではなくお米。

『ぎんさん』『ちほみのり』『ゆめおばこ』の3種類がブレンドされています。

でも、ちょっと待ってください。

これらの酒米……聞いたことなくないですか?

『ぎんさん』はいいとしても、後半の2つは耳に馴染みがないですよね。

それもそのはず。

 

実は『ちほみのり』と『ゆめおばこ』って、酒米ではないんです。

 

そもそもが飯米。食べるためのお米なんです。

そしてこれら3つのお米に共通するのが、こちらです。

 

“あきたこまちよりも多く収穫できる見込みがある”

 

確信をもって言えることではありませんが、安さの秘密はそこにありそうですよね。

 

『両関 純米酒 裏銀紋』の味はどうだった?

この1本の味わい、一言であらわすのならこうなります。

 

「たしかに飯米かも!」

 

まずは冷やして飲んでみると、香りからは甘みのあるフルーティーさ。

まったく予想していなかった華やかさに価格を忘れます。

 

味わいからは、甘みの奥に青臭い酸味があります。

透明感はありません。

舌のどの部分でも、まろやかな重みを感じます。

 

そしてこれが不思議で。

クリアーな味わいではないのに、やわらかさがあるから飲みやすいんです。

冷やして楽しむだけでも十分な価値を感じました。

 

しかし銀紋といえば、燗の雄。

ここからは熱燗でいただきます。

 

レンジで40秒温めるだけのお手軽燗でいただくと、これがおもしろい!

香りの表面にはまだ華やかさがありますが、すぐにお米の香りになるんです。

それも“炊いたお米”の香りに近くなります。

 

飲めばお米の深いうまみがぐいぐい。

“爽やかさ”や“華やかさ”とはまったく無縁です。

ただただ全面に「私は米である」と主張してきます。

 

これはいい。これはいいです。お米を飲んでるって感じがします。

 

そして納得がつよいです。

使っている酒米を調べていて、おもわず膝を打ちました。

だって、3つのうち2つが飯米なのですから。

 

“食べるためのお米を、飲む”

 

はじまりの日本酒って、こういう飾らない味わいだったのかなと想像してしまいます。

なので、吟醸酒がお好きな方にはあまりオススメはしません。

あくまでも日常的に晩酌をされる方。

「日本酒は果物じゃない、米なんだよ」

という方にオススメしたい、日本酒の原点を思わせる1本でした。

 

『両関 純米酒 裏銀紋』の商品情報

  • 原料米:ぎんさん、ちほみのり、ゆめおばこ
  • 精米歩合:60%
  • 日本酒度:+2.1
  • 酸度:1.6
  • アルコール度:16度
  • 参考価格:1,430円

 

※データは2021年のものです

 

まとめ:『裏銀紋』はコスパよく、懐かしく、温かい

実は『両関 純米酒 裏銀紋』は、2021年11月18日発売の新商品。

ブレンドという手法も、最近になって耳にするようになった試みです。

なので私は想像します。

 

この1本はコロナ禍が生んだ1本なのではないか、と。

2021年だからこそ生まれた純米酒なのではないかと勘繰ります。

 

もし違ったとしても、飲むことが酒造を応援することになるのなら。

こうして発信することで、ひとりでも多くの人が飲んでくれるのなら。

この記事にもおねだん以上の価値が生まれるのではないかと思います。

 

日本酒業界、つぎつぎと『挑戦の芽』が出てきていますね。

新たな試みがどう芽吹いていくのか。

日本酒の時代もまた令和に入っています。

お互い楽しんで飲んでいきましょう。

 

それでは今回はこのへんで。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

いしかわでした。

 

※熱燗で飲みたい日本酒をいくつかまとめています。

 

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