こんばんは、いしかわです。
遠い過去から新鋭がきました。
名を、『花立』。
華やぎある美しいラベルに、趣のある書体。そして『復活栽培』の文字です。
“気になる”をここまで詰めた日本酒も珍しいのではないでしょうか。
この1本、語らずにはおれません。
私という前座は早々に退いて、さっそく本筋に入りましょう。
『純米酒 花立』ってこんなお酒
『花立』は、『陸羽132号』と『きょうかい1号酵母』でつくりあげた、歴史を彩った純米酒です。
ポイントは、米、酵母の両方にあります。
まず、ぜったいに外せないのが酒米。『陸羽132号』です。
この酒米は、日本で初の人工交配種。
なんと、大仙市の花館地区にて生まれました。
「え、秋田の酒米なの?」
と思われたかもしれません。
今では『秋田酒こまち』がその代名詞ですし、次に聞こえてくるのは『美郷錦』や『吟の精』でしょうか。
『陸羽132号』なんて聞いたことない、という方がほとんどかと思います。
実は、それもそのはず。
『陸羽132号』が煌めいていたのは戦前まで。昭和10年代までは作付面積が全国1位だったそうです。
今をときめくコシヒカリやササニシキ、あきたこまちも、系譜を辿れば先祖にあたる。
それほどに『陸羽132号』は、戦前に燦然と輝きを放っていたんです。
しかし、しかしです。
盛者必衰、栄枯盛衰。
先にあげたコシヒカリやササニシキの台頭により『陸羽132号』は、昭和30年代を境にすがたを消していきました。
孫子の代が栄えることで、歴史に消えた酒米なのです。
しかし、
“その酒米を、復活させよう”
約60年の時を経て、復活させようとする動きが生まれたんです。
それも、生誕の地『花館』にて。
これこそが『復活栽培プロジェクト』。
米も水も花館産にこだわり、秋田清酒が造りに入ります。
そして、酵母です。
こちらも『復活』がよく似合う、歴史のなかの酵母。
大正時代まで使われていたとされる『きょうかい1号』が採用されています。
酒米が60年ならば、酵母は100年。
当時の味わいを再現する目的ではないはずです。
当時の味を知る人ももういないはずです。
あの頃より技術は進歩しました。
機械もまたしかりです。
現代の技術と設備でつくりあげる、いにしえの1本。
それはもう、『新しい』と呼べるのではないでしょうか。
過去の『発掘』ではなく、現在だからできる『挑戦』である、と。
『純米酒 花立』を飲んでみて
この1本、“香りが味”です。
フルーティーなのにフローラル。花のような香味に強めの酸。メロンのような青いフルーティーさを感じながらも、よく続く余韻。
長いです、この余韻が。
しっとりなうまみが広がり、しっかりと残ります。
けっしてトレンドではない味わいです。
なのに、古くない。
酒米と酵母が噛み合っていて、いつまでも華やかで、うまみある香りが鼻を抜けます。
日本酒を飲み慣れた人にとっては“おもしろい酒”。
知らない人が飲めば“不思議な酒”。
そんな印象をおぼえるかもしれません。
個人的には、今までになかったお酒でした。
70%精米らしく舌には沈まず、口当たりには『まろみ』。
貼りついているかのように香りが長く、その点も、日常にはない味わいでした。
おもしろいし、おいしいです、この1本。
『純米酒 花立』の商品情報
- 原料米:大仙市花館産『陸羽132号』
- 精米歩合:70%
- 酵母:きょうかい1号酵母
- アルコール度:16%
- 仕込み水:花館地区天然地下水
- 720ml:1,980円
※ネーミングの由来は、旧村名の『花立』より
まとめ:侮るなかれの復活酒。正直、もっと知られてほしい
実はこの『花立』に使われている『陸羽132号』ですが、インスタグラムで成長記録が見られます。
初年度はすんなりいった部分に2年目は苦労されていたりと、試行錯誤の日々。
ですが悩みながらも力強く、商品化までの道のりを歩まれています。
古きものへの新たな挑戦。
その背中をみていると、やっぱり応援したくなりますよね。
私もなるべく毎年購入して、ここに追記していければと思います。
ぜひ、あなたも。
気になった瞬間、気になった年でいいので、ぜひ飲んでみてくださいね。
1杯にいろんな想像が膨らみますから。
ではでは!